ブーツフィッターってなに?
ブーツフィッター(Boot fitter)とは、足にブーツ(boot)をフィット(fit)させる人(-er)のことだよ。
スキーブーツは加工や調整が必要ってこと?なんで?
スキーブーツに限らず、一般的な靴もそうだけど、各個人に合うように作られているわけじゃないんだよね。あくまで平均的な足型に合わせているだけなんだ。布製や革製の靴なら柔らかいので、履いているとフィットしてくる場合も多いけど、スキーブーツはウレタンという硬い素材でできているので、そうはいかないんだよ。
だからよく「スキーをしていると足が痛くなる」って人がいるのね。
そうだね。ブーツフィッターの仕事を紹介する前に、まずはブーツが合わずに足が痛くなる主な理由を見てみよう。
足が痛くなる理由
- ブーツ(内容積)が小さすぎる
- ブーツ(内容積)が大きすぎる
- 足本来の形状が保たれず、余計な負担がかかっている
①ブーツ(内容積)が小さすぎる
これは・・・普通に考えて痛いよね。
うん。そうだね。
私も経験があるからわかる。セールでお買い得だからって、普段24.5cmを履いているのに、22.5cmの靴を買ったことがあるから(笑)
それは痛い(笑)でもスキーブーツの場合は、実際の足幅にラスト(ブーツの幅)が合ってないことが原因で起きることが多いんだよ。例えば、同じ25.5cmのスキーブーツでも、ラストと呼ばれるブーツの幅が約90mmのものから、100mmを超えるものまであるんだ。
だから足のサイズだけではなく、足の幅も注意しないといけないんだね。
②ブーツ(内容積)が大きすぎる
今度は逆に、大きすぎるパターンだよ。
そうなの?大きい分には問題ないと思ってたけど・・・
スキーは、「滑ったり止まったり曲がったりするスポーツ」なんだ。想像してみてよ。滑ったり止まったりする時に足が前後に動いたり、曲がったりする時に足が左右に動いて、硬いウレタンの壁にぶつけられるのを・・・
ほぼ罰ゲームだね・・・(笑)でもなんで、そんなブカブカのブーツを選んじゃうの?
主な理由は2つあるんだ。1つ目は、普段の靴のサイズ=実際の足のサイズと勘違いしているパターン。実際の足のサイズは普段履いている靴のサイズより小さいことが多いんだよ。2つ目は、足幅が窮屈だからといって、1つ、または2つ上のサイズを購入してしまうこと。足幅が窮屈な場合は、そのブーツの幅(ラスト)が何mmなのかを見て、サイズアップではなく、同じサイズで、よりラストの広いものを選ぶ方がいいんだよ。
③足本来の形状が保たれず、余計な負担がかかっている
これってどういうこと?
少しむずかしい話になるかもしれないけど、できるだけ簡単に説明するね。下の図のように、人間の足は3つの支点とそれを結ぶアーチで体重を支えているんだ。
なるほど。
スキーは、レベルの高低はあれども、スピードを出して滑るスポーツだから、足裏には自分の体重以上の力がかかるんだよ。そんな時に、硬いブーツの中で足が本来の形状を保てなくなると、痛みが発生することがあるんだ。例えば上の図のAとCの間のアーチに負担が多くかかると、土踏まずが痛くなったり、扁平足や外反母趾を引き起こすことにもなったりする。
足の裏ってすごい仕組みだったんだね。
その通りだね。本来の形状さえ維持できれば、人間の足裏はかなりの圧力にも耐えられるんだ。でも、形状が崩されて、足裏が耐えられなくなると、その分の負担が膝や腰に回ってしまうこともあるんだ。
ブーツフィッターの仕事
さて、ここからがやっと本題なんだけど(笑)
前置きが長かったわね(笑)でも、ここまでこれば、ブーツフィッターさん達が何をしてくれる人なのか段々わかってきかたかも。要するに・・・①小さすぎるブーツの内容積を増やす、②大きすぎるブーツの内容積を減らす、③足本来の形状を保たせる助けをする、ということね。
その通り!それに加えて、④スキーブーツの性能をアップさせるカスタムを行う、ということもね。
- 小さすぎるブーツの内容積を増やす
- 大きすぎるブーツの内容積を減らす
- 足本来の形状を保たせる助けをする
- スキーブーツの性能を引き出させるカスタムを行う
①小さすぎるブーツの内容積を増やす
これは要するに、ブーツを広げたりするってことね。
うん。ブーツといっても、プラスチックでできている「シェル」と呼ばれるパーツと、そのシェルの中に入っていて、実際に足を包むこむ「インナー」と呼ばれる部分に分かれるんだ。最近のブーツのほとんどは「熱成型(サーモ)インナー」が使われているので、シェルから外したインナーをオーブンで加熱し成形しやすい状態にしてから、シェルの中に戻し、そこに足を入れて足の形に馴染ませるんだ。中にはシェルも熱成型できるブーツもあるんだよ。
ポカポカあったかくて気持ちよさそう。
インナーが足の形に馴染んだら、それでも足があたる部分のシェルを、特殊な機器で広げたり(シェル出し)、削ったり(シェル削り)するんだよ。
削られるのが足じゃなく、シェルの方で良かったね♡
(おそろしいことを・・・)
②大きすぎるブーツの内容積を減らす
今度は減らすのね。ということは、縮めるってこと?
そういうことができるブーツも一部あるけど、実はそうじゃないんだよ。実際、スキーブーツは縮めることがほとんどできなくて、広げる方がやりやすいんだよ。だから、2つのサイズの間で迷ったら、小さめ(キツめ)のブーツを選ぶことをおすすめするよ。
じゃあ内容積を減らすってどうするの?
基本的には、足とブーツの隙間をパッドで埋めることだね。あと、ブーツによっては、インナーの中にチューブを通して、そこからパラフィン系化合物を注入し隙間を埋めるというものをあるんだ。でも、これらの方法は、あくまで、部位的にある僅かな隙間を埋めるというもので、大きすぎるブーツを小さくする方法ではないんだ。
じゃあやっぱり、大きすぎるブーツを選んでしまうのは絶対NGだね。
主な理由は2つあるんだ。1つ目は、普段の靴のサイズ=実際の足のサイズと勘違いしているパターン。実際の足のサイズは普段履いている靴のサイズより小さいことが多いんだよ。2つ目は、足幅が窮屈だからといって、1つ、または2つ上のサイズを購入してしまうこと。足幅が窮屈な場合は、そのブーツの幅(ラスト)が何mmなのかを見て、サイズアップではなく、同じサイズで、よりラストの広いものを選ぶ方がいいんだよ。
③足本来の形状を保たせる助けをする
これはどういうこと?
結論からいうと、インソール(中敷き)を交換するんだ。
スキーブーツには中敷きが入ってないの?
入ってるには入ってるんだけど、ハッキリ言って、クオリティが低すぎて、インソールと呼べるようなものじゃないんだよ(笑)
そんなこと言っちゃって大丈夫なの?スキーブーツメーカーさんから干されちゃうんじゃ・・・(笑)
大丈夫(笑)ブーツメーカーさんも、「インソールは各スキーヤーがそれぞれの足に合わせて交換するもの」と考えているから、そこにお金をかけないんだ。人それぞれ足型が違うから、全ての人に合うインソールなんて最初から存在しないし。
それもそうね。
インソールには大きく分けて①既製品と②カスタムインソールがあるんだよ。既製品には色々と種類があって、その中からブーツフィッターさんが、それぞれに一番合ったインソールを選んで装着してくれるというもの。カスタムインソールは、その人に完全に合わせて、ブーツフィッターさんが作成してくれるものなんだ。
どっちがおすすめなの?
これは、人それぞれだからね。カスタムインソールに比べると、既製品は手軽で比較的安価だけど、もともと入っているインソールから考えると、非常に大きなアップグレードなんだ。なので最初は既製品でもいいかも。それから段々とスキーが上達してきて、より上のレベルでのフィット感やコントロール性を求める時になったら、カスタムインソールを入れるということもできるしね。
とりあえずは、もともと入ってるインソールを交換するということが大事なんだね。
④スキーブーツの性能を引き出させるカスタムを行う
スキーブーツの性能ってどうやって引き出させるの?
これは本当に多種多様なんだよ。1つにはカント調整というものがある。実を言うと、これは色んな意見があるんだけど、端的に話すと、脚部の骨格に合わせてブーツのアッパーシェルと呼ばれるシェルの上半分の傾きを左右(内側・外側)に傾けることなんだ。
うーん・・・よくわからない(笑)
それでいいんだよ(笑)カント調整に関して書いていたら、それだけで別の記事になってしまうからね。
他にはどんなカスタムがあるの?
僕自身がやっている加工は、スキーの角付けを助けるボトムアップ加工とブースターストラップ交換かな。中級者以上の方にはブースターストラップ交換はおすすめ。それ以外にも、シェルの高さを低くするシェルカット、コバガードの取り付けなどもあるけど、詳しくはお近くのブーツフィッターさんに聞いてね(笑)
(出た。いつもの逃げオチ・・・)でも、これら全部ブーツフィッターさんがやってくれるのね。ブーツフィッターって経験と知識が必要な専門職なんだね。
いかがでしたでしょうか?当初に考えていた内容より、少し専門的になってしまいましたが、眠くなってしまいましたでしょうか?「いやいや、もっと聞きたかった」というマニアックな方々はコメントやお問い合わせからメッセージくださいね。ある程度希望される方がいらっしゃれば、詳しく書いていこうと思います。それでは、また次の記事で!